◆◇エゾシカ活用を考えるセミナー(2015.3.10)


林野庁 北海道森林管理局 計画保全部保全課            利用調整係長 (エゾシカ担当)  山田晴康氏


 

2015.3.10(火)札幌パークホテルで北海道農政事務所などの主催による「エゾシカ活用セミナー」が開かれた。

第1部は   (1)「エゾシカを活かして森林を守ろう」

           (2)「占冠村とエゾシカと人とのかかわり」

第2部は  (3)「エゾシカ肉を活用した料理の講演及び実演」と 「試食会」。

 

以下は、手元メモと記憶により整理したもの

(私見も入っているが講師の認証済み)。


◆「エゾシカを活かして森林を守ろう」


山田晴康氏
山田晴康氏

 講師:林野庁 北海道森林管理局 計画保全部保全課 利用調整係長(エゾシカ担当)山田晴康氏 全国でエゾシカ、カラス、イノシシが農林・水産業に与える被害は深刻。その9割はシカの食害だ。エゾシカによる農林業被害額は減ってはいるが、それでも平成25年度末は56億円。推定生息数は約56万頭。捕獲頭数は約13万頭(北海道速報値)である。人間による捕獲がない場合、エゾシカは年に約20%強の割合で増加。つまり3~4年すると元の生息数の約2倍にも増えてしまう。個体数管理が必要だが、ハンターは不足。捕獲後の処理もネックとなる。官民一体での対策を急がなければ北海道の生態系が破壊されてしまう。道は昨年4月、全国に先駆けて「北海道エゾシカ対策推進条例」を施行した。


エゾシカは日本シカの亜種。その中でも最大級の大きさだ。雄の成獣ともなれば背丈は170㎝、体重150㎏以上。雌でも80㎏以上あるシカもいる。大きいことはいいことか?エゾシカにとっては体温維持に有利。外敵も限定される。しかし、人間にとっては困ることばかり。まずは交通事故。巨体がぶつかることで車体は大きなダメージを受ける。エゾシカ捕獲も重労働。100㎏あるものを山の中から平地へ搬送するには多人数が必要。大変な労力を要するため、北海道森林管理局では、エゾシカ捕獲支援のための林道除雪を行っている。


更に目を向けるべきは、山の土壌の流出だ。シカの食害で森の樹木に立ち枯れが広がれば、木の根による表土の保全力が下がり、大雨による斜面崩落や土砂崩れを引き起こす。また、恵みの雨を受け止めていた下層植生(森林内に生える草木)がシカに食べられ消失すると、雨粒が直接地面に当たるため、土壌の流出が起こる。 


また、エゾシカが増えてダニも増えた。ダニは感染症の媒介となることもあり、山へ入る際は注意が必要だ。メリットといえば、身体が大きい分、銃弾が当たりやすいということだろうか。

 

生物多様性保全、生態系への影響も計り知れない。兎に角、シカは大食漢!個体数が多いためエサ不足。嫌いなもの以外なんでも食べる。食べる量は一日3㎏程度。シカの越冬期の主食はササ。雪の中から掘り出して食べる。しかし、越冬期後半ともなればササも無くなる。そこで樹の枝葉や樹皮食いが始まる。皮をぐるりと食べられた樹木は生きていけない。小さな木は成長できずに枯死。シカが好む樹種を中心に姿を消してゆく。シカはトドマツを食用としては余り好まないが、食べない代わりに角を研ぐ。雌をめぐり、雄同士が戦うためだ。たとえ一部の損傷であれ、トドマツは正常に成長できなくなる。こうして森の成長は止まる。森に残るのはシカが好まない植物だけ。森の植生は単調となり、生物多様性は失われる。かつてはリスや野ネズミなどが食べていた下草やミズナラの芽などもシカに食べられてしまうため、彼らは森からいなくなる。虫もフクロウも小鳥もいなくなる。もはや、食物連鎖は成り立たず、森の生態系は変わっていく。過密状態にあるエゾシカにとってもそれは大変なこと。餌を求めひしめき合う中で、弱いものから死んでいく。

 


○クマとシカの関係

❶最近、クマが街に出没するのもエゾシカが原因か?シカが山で美味しい植物を食べ尽くしてしまうので、食べるものが無くなり街に出てくるという説がある。

❷子ジカがたくさん生まれているが、最初の冬を越せずに死んでいくものも多い筈。また、ハンターが狩猟した後、ルールに則った処理をせず、捕獲したシカを中途半端に山中に放置してくる場合がある。クマはそれらを食べることで、冬眠しないでも生きられるようになった。 


○交通事故

エゾシカによる交通事故は年間2,000件程度。車で衝突した場合、修理費の平均額は1件につき42万円。

自損事故対応の保険でないと丸損になる。二輪での死亡事故もある。鉄道事故では釧路本線、花咲線が2トップ。最近は宗谷本線が2位に食い込んでいる。最近では空港障害も出た。空港の周囲にはフェンスが張り巡らされているが、シカの跳躍力は素晴らしいので2mぐらいは飛び越えてしまう。今まではバードストライクばかりを気にしていた飛行場だが、今後はエゾシカ対策も必要になりそうだ。


○食肉として

最近、エゾシカ肉を輸出しようという論文が出された。もともと缶詰にして明治時代は輸出していた。エゾシカはアイヌ語ではユク(yuk)であり、獲物を意味した。沢山いすぎて主食のようなもの。そのため、神様扱いはされず、神様からの贈り物とされた。日本語のシカの語源は諸説あるがカノシシが転じてシカになった。香(の)宍(=肉)→良い香りの肉という意味。 昔から食資源なのだ。

 

シカ肉はまずいか?シカ肉は「臭い、汚い、固い」の3Kか?

そもそも、エゾシカ肉なんて貰うものであって、買うものじゃない。山から捕ってきたものは汚いというイメージもあった。外食でシカなんてありえない。お金を出すほど美味しいものじゃないと思われてきたが、しかし、これは血抜きの処理等が適切になされなかった過去のお話。適正に処理されたエゾシカ肉はおいしく、かぐわしいのだ。いま、店頭に出ているものは衛生面でも特に気が配られている。

さて、エゾシカ1頭から20㎏の肉がとれる。平均的な雌の体重は80㎏程度。歩留まりは25%程度か?

 

年間捕獲数14万4000頭×20㎏=288万㎏ 道民544万人で288万㎏を食べる。道民一人当たり500グラム強/年。頑張れば1回で食べられる量だ。

 

But 大きいシカは美味しくないかも。

国内でのシカ肉需要はイマイチだとしても、中国や韓国では漢方として珍重されているのも事実。北海道の食資源として誇りをもって活用を進めていきたい。本日のメインは試食会。フードプロデユーサー青山則靖氏のレシピによるエゾシカ料理を味わっていただきたいと思う。

◇◆◇エゾシカ活用を考えるセミナー❷パークホテル 2015.3.10


中島辰男氏
中島辰男氏

「占冠村とエゾシカと人とのかかわり」

 

講師:占冠村林業振興室

地域おこし協力隊

   中島辰男 氏



 

占冠村は面積571.31㎢  人口1218万人。森林率が94%、その内9割が国有林.国有林と深いかかわりをもつ地域である。過去10年間でエゾシカによる牧草等の被害が増加。占冠村と主要な森林管理署である上川南部署と連携し対策に取り組んできた。平成26年度に占冠村猟区を開設(9/15~)。西興部村に次ぎ道内2番目となる。詳しい発表内容については下記よりご覧ください。

 

www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/kikaku/pdf/25happyou_s_27.pdf

(上川南部森林管理署提供)


■シカ肉料理試食会