2泊3日の旅 網走行


JR北海道車内誌 11月号の写真
JR北海道車内誌 11月号

23日の旅は、講演旅行の筈だった。But 出発前日にコロナ禍でセミナー中止。リモートでの要請も頂いたが、不慣れを理由に断って、個人旅行に切り替えた。

行き先は、2週間前のNHK「ブラタモリ」で紹介されたばかりの網走。当地は初めてではないが、いつも仕事がらみなのでトンボ帰りが殆どだ。だが、今回は、解放感いっぱいの北の旅人を気取ってみる。

番組で視たモヨロ貝塚を訪れ、遠くからだが「帽子岩」をこの目で見た。現物現場に勝るものはない。図らずも、初めから終わりまで知識開眼の3日間となった。


まずは、一日目のJR車中。真新しい車内誌を手にする。11月号の特集は「野外彫刻と話そう」である。登場するのは札幌駅南口の駅前広場に立つ5人のブロンズ像。石狩浜にある「石狩―無辜の民」、彫刻の町と呼ばれる旭川買物公園にある「若い女」、大沼の彫刻公園「ストーンクレージーの森」の「もどり雲」、釧路では幣舞橋の「道東の四季」と題される4人の女性像。



彫刻は永遠不変のものではない」と解説を加えるのは、9月に我がエゾシカ倶楽部で「人獣共通感染症」について語って下さった北大名誉教授の橋本信夫氏だ。氏は「札幌彫刻美術館友の会」の会長でもある。大理石は、屋外に放置すると数十年から100年で表面がボロボロになる。酸性雨が石灰を溶かし、排気ガスや融雪剤の塩害の影響もある。長く守り、次の世代につなげなければならない。その為に、同会は40年にわたって、彫刻の調査、点検、清掃を続けてきた。表面を水で洗い、蜜蝋でワックスがけをするそうだ。


私は以前から、JR車内誌が好きである。知性的で美しい文章でちりばめられた冊子。僅か50頁に詰め込まれた内容の重みは千金にも値すると思っているが、JR特急に乗らなければ読むことができない。たまたま、11月に乗車し、門外漢の私が彫刻という文化の一端に触れ、その意義を曲がりなりにも感じられたことはナント幸運なことであったろう。