◇◆◇エゾシカは究極の地産地消です


         北海道エゾシカ倶楽部サポーター 安川誠二(札幌消費者協会理事) 


 

野球で言うなら日ハムの中田翔、サッカーならACミランの本田圭佑、スキージャンプなら間違いなく高梨沙羅ちゃんといった感じでしょうか。地産地消の4番バッターで、エースストライカーで鳥人的存在なのが「エゾシカ」だと断言します。とても頼りになる存在ということなんです。

世の中、グローバル化の時代だといいます。国境を越えて人、モノ、カネが自由に行き来するのが、人々の暮らしを豊かにするらしい。だから日本も環太平洋連携協定(ТPP)に参加したのだといいます。協定が結ばれればアメリカやオーストラリアなどからは、安いコメや牛肉がどんどん入ってくるようになるでしょう。

 


世界一の農業超大国アメリカにとって、コメや小麦、大豆、トウモロコシは海外輸出の戦略物資。少子化とはいえ1億2千万人いる日本市場はそのターゲットです。日本農業を支えている北海道のコメや小麦、トウモロコシは基幹作物になっていますが、ТPPで北海道農業は崩壊しかねない状況です。

北海道米をこよなく愛し、道産小麦のパンやラーメンに舌鼓を打ち、遺伝子組み換えでない道産大豆の納豆を毎朝、はしでぐるぐるとかき回してほっかほかの「ななつぼし」の上にのせて食べる私にとって、由々しき事態になりそうです。安いからといって、アメリカ産米を食べる気には到底なれません。 


まあ、アメリカとの同盟関係を優先させて、国民の知る権利を無視して特定秘密保護法なんていう悪法をさっさと成立させてしまう安倍首相は喜んでカルフォルニア米を食べるでしょうがねえ。やっぱり私は、農家の顔が見えて地域でとれる新鮮でおいしい道産農産物を安心して食べたいし、食料自給率が200%近くもある北海道農業を食卓から支えていきたいと思っているんです。

こんななんだか怪しげな時代になりそうな中で、颯爽と登場したのがわれらが地産地消のエース、「エゾシカ」です。鉄分が多くヘルシーな肉はもちろんのこと、皮や角は加工品としても利用できる、しかも資源は豊富ですべて地元道産ものです。エゾシカを有効利用していくことが、そのまま「地産地消」につながっていくのがなんといっても「いいね!」です

 


エゾシカを利用するということは、地場にある資源を無駄にせずしっかりと使うことでもあり、地域の産業を育成することでもあり、生産者(猟師)と加工業者と消費者がともに協力し合っていくことでもあります。エゾシカに想いをはせると、あまちゃんではないですが「ジモト(地元)」を大事にしたいという思いが湧いてきます。「愛国心」なんてものは上から押し付けるものではなく、こういった日々の暮らしや人の心の中の自然と生まれてくるものだと思うのですがねぇ。


鹿肉を初めて口にしたのは旭川の居酒屋でした。ちょっと固めでしたが、油っぽくないさっぱりした食感が印象に残っていました。それからかれこれ20年近く。当時はなかなか手に入らなかったのですが、今では札幌・狸小路の八百屋さんやコープさっぽろでも扱うようになり、手軽に買えるようになりました。

 私の机には鹿皮でつくった15センチ四方のクリーナーがあり、毎日携帯電話の画面を拭いています。これを使うと画面はぴっかぴかにきれいになるんですね。ほんと、びっくりです。また以前訪れた平取町・二風谷の工芸店で買ったマキリ(小刀)には、長さ10センチほどの鹿角がひもに付けられており、角をズボンのベルトなどに挟むと小刀を腰からぶら下げられるようになっています。角をいじっているうちにいつの間にかつやが出てきて、光沢がなんともいえない味わいを醸し出し、装飾品としてもいい感じになってきました。

 エゾシカのことを書き出すと止まらなくなってしまうこんな私ですが、今度はサポーターをはじめたくさんの道民の方々とエゾシカ談義にお花を咲かせたいものです。最後にひと言。エゾシカは「地産地消」の4番バッターで、エースストライカーで鳥人的存在と書きましたが、私たちの命をはぐくむ大切な食べ物までも市場経済にゆだねてしまうグローバリズムに対して反旗を翻す、もしかして北海道の「ジャンヌ・ダルク」になるかも知れない、なーんて思い始めています(笑)。ちょっと大げさでしたが。 ( 2014.1.23)