沖縄の伝統文化を感じる講座として、「マース袋」の製作実演会が行われました。
🧂マース袋とは?
マース袋は、沖縄で古くから親しまれてきた塩のお守りです。「マース」とは沖縄の言葉で“塩”のこと。旅の安全や日々の厄除けを願い、身につけたり持ち歩いたりすることで、邪気を遠ざけるとされています。
🏝️浜比嘉島の神聖な塩を使用
今回のマース袋には、琉球神話の舞台として知られる浜比嘉島の天然塩を使用。浜比嘉島は、子孫繁栄・縁結び・無病息災を祈る聖地としても有名です。
🌊満月の夜に採取された海水から精製
袋の中に入っている塩は、満月の夜に浜比嘉島の海から採取された海水を使って丁寧に精製されたもの。月の力と海の恵みが込められた、特別なお守りです。
さらにマース袋は、漁師や旅人だけでなく日常生活でも家族の安全や健康を願って持たれ、玄関や車内に掛けられることもあります。紅型やミンサー織の文様には「長寿」や「永遠の愛」などの意味が込められ、持つ人の願いを静かに守り続けます。
本島から海中道路を渡って行ける小さな島で、今も昔ながらの集落や赤瓦の家並みが残ります。島全体が神話と生活文化の舞台であり、訪れる人は海風とともに古代からの物語を感じ取ることができます。
シルミチュー霊場は子宝や安産を願う人々が全国から訪れる場所で、洞窟内には神聖な空気が漂います。アマミチューの墓もまた、島の人々が代々守り続けてきた拝所で、旧暦行事や祈願の際には今も多くの参拝者で賑わいます。
工房は潮の香りと波音に包まれ、ここで作られる塩は料理の味を引き立てるだけでなく、贈り物やお守りとしても喜ばれます。島の魅力を伝える手土産としても人気です。
ここでは、流下式塩田という、竹枝を利用した昔ながらの製塩方法を採用。自然の力で海水を循環させ、ミネラル豊富な塩に仕上げます。
この方法は海水を竹枝に流し、太陽と風の力で水分を蒸発させる自然に寄り添った製法。人工的な加熱をほとんど使わないため、海水本来の旨みやミネラルがそのまま残り、まろやかで深みのある塩が生まれます。
昔から満月の日はエネルギーがとても高まる日とされ、潮の満ち引きや月の引力の影響で特別な力を宿すと信じられてきました。その海水で作られた塩は、持つ人の心身を清め、前向きなエネルギーを与えるといわれています。
実演会の様子について
製作工程の流れ
1. 型取り
革を平らに整え、型紙を当てて形をペンでなぞります。ホックやボールチェーン用の穴は、革の厚みによる位置ずれを防ぐため、後工程で開けます。
2. 裁断
カッターで直線部分は定規を使って正確に、上蓋となる曲線部分はコインや円形の蓋をガイドにしてカット。美しい曲線が仕上がります。
3. 底部の貼り合わせ
三角形の底部分を接着剤または仮止めテープで貼り合わせます。接着剤の場合は両面に塗布してから圧着します。
4. 縫い穴あけ
貼り合わせた底部に線を引き、菱目打ちを木槌で叩いて縫い目用の穴を開けます。
5. 手縫い
糸を用意し、両端に針を通して交互に表裏から縫い進めます。針は常に同じ方向から刺すことで縫い目が整い、糸止めは革の間に隠すことで仕上がりが美しくなります。
6. 穴あけ(蓋・本体・ボールチェーン用)
蓋を折り、中心位置を決めてハトメ抜きで穴を開けます。袋本体にも印をつけ、ゴム板を挟んで同様に穴を開けます。ボールチェーン用の穴も同じ方法で加工します。
和やかな雰囲気の中、講師の指導のもと、参加者が互いに声を掛け合いながら手を動かす様子が印象的。
7. ホック取り付け
オス・メスそれぞれのパーツを穴にセットし、ホック打ち金具と万能打ち台を使って木槌で打ち込みます。オス側は間にコインを挟んで打つのがポイントです。
8. 仕上げ
最後にボールチェーンを取り付けて完成です。
実演会の会場では、テーブルには革や道具がごちゃっと並んでいる!
講師の声に合わせて、あちこちで型紙を押さえる手、カッターを動かす音。
木槌の「トントン」という音が重なって、時々「おー、できた!」と笑い声。
隣同士で道具を貸し合ったり、縫い目を見せ合ったり・・・
色とりどりのマース袋が並んだとき、自然と歓声が起きました。
みんなの顔が、ちょっと誇らしそうで、すごくいい時間でした。
マース袋は、沖縄の暮らしや旅に深く根付いたお守りであり、塩には海や月の恵み、そして人々の願いが込められています。
これまでは布や織物で作られることが多かったマース袋に、北海道のエゾシカ革という新しい素材を取り入れることで、これまでにない質感と耐久性が加わります。
製作の手順は比較的シンプルで、指導者のもとで学べば短時間で完成できるため、観光体験や地域イベントにも取り入れやすいです。
沖縄の伝統と北海道の自然素材が出会うことで、土産品としての魅力はもちろん、地域間交流や新しい文化発信のきっかけにもなると感じています。
東野剛巳