「私たちのくらしと生物多様性」札幌市講座


札幌市環境局環境管理担当課係長  畠山亜希子氏 (2017.2.22)


北海道は生物多様性の宝庫といわれています。生物多様性は、人間を含めすべての「生き物」の生命を支えるもの。ところが今、生物多様性は大きな危機に晒されているといいます。沢山の生き物が絶滅に追いやられているのです。エゾシカが増えることも原因の一つ。この素晴らしい生き物たちを失えば、私たちの生存も危ぶまれます。私たちはいま、何をすればいいのでしょうか。今日は、札幌市から畠山亜希子氏を講師に迎え、生物多様性について「キホンのキ」から、教えていただきました。 


(1)札幌市の自然

札幌市大通公園の風景写真
札幌市大通公園の風景

 

地球にいる生き物はわかっているのだけで175万種。日本は約9万種、北海道は約1万5000種、札幌は約6000種の動植物が確認されている。

 

昭和35年には人口50万人だった札幌市が、現在は約196万人。

大都市だが、面積の6割を森林が占め、日本最大の陸上哺乳類ヒグマが生息している。世界を見ても、このような例はない。自然豊かな都市である。

  


(2)生物多様性って何?

札幌市「生物多様性の保全」ホームページからのイラスト
出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページより

地球上にさまざまな生き物がいて、それらがお互いにつながりを持っていることを表す言葉が「生物多様性」。生物多様性によって、絶妙なバランスで豊かな生態系が保たれている。

 

生物多様性には「3つの多様性」があるといわれる。この3つの多様性がお互いに影響し合うことで、地球全体の生物多様性が成り立っている。

 

⓵生態系の多様性  ②種の多様性  ③遺伝子(種内)の多様性

 


(3)生物多様性って私に関係あるの?

出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページからのイラスト
出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページより

 

生物多様性は…

・全ての生命の基盤である

・生活の糧である

・豊かな文化の根源である

・生活の安全を支えている

 

 空気、水、食べ物、衣服、医薬品、景観、土砂崩れ防止等、暮らしに必

 要なもののほとんど全ては生物多様性がもたらす自然の恵み(生態系

 サービス)である。

生物多様性なしに私たちは生きてはいけない。


現在の私たちの便利な暮らしは、世界とのつながりなくしては成り立たない。食糧、木材、エネルギー、鉱物資源など輸入に頼っているからだ。輸入に依存し、大量に消費している私たちの暮らしは、世界の生物多様性に対して大きな影響を与えている。

EX:携帯電話には「タンタル」というレアメタルが使われているが、この採掘によりゴリラが生息地を追われ、その数が激減している。


出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページからのイラスト
出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページより
講座資料からのイラスト
出典:講座資料より


(4)今、生物多様性が危機に!

出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページからノイラスト
出典:札幌市「生物多様性の保全」ホームページより

 

 

今、地球上では、生き物の絶滅が進み、生物多様性が急速に失われつつある。自然現象の影響で恐竜の絶滅など5回の大量絶滅が起こっているが、今は6回目の大量絶滅期と呼ばれ、1年間に4万種というこれまでにないスピードで生き物が絶滅しているといわれる。生物多様性の喪失は地球温暖化と並ぶ深刻な環境問題である。 この絶滅スピードを速めている主な原因は、私たち人間の活動にある。


「第一の危機」・・・開発・乱獲

 埋め立てなどの開発、鑑賞や商業利用のための大量乱獲、過剰な摂取 

「第2の危機」・・・手入れ不足

 人工林の手入れ不足や農地の放置により、そこに暮らしていた動植物が生息・生育できなくなっている。エゾシカなどの増加も農林業

 被害や生態系への影響を及ぼす。 

「第3の危機」・・・外来種や化学物質の持ち込み

外来種→海外から日本に。本州から北海道に。

     元々いた在来種が捕食されたり、住処を奪われてしまう。

・化学物質→動植物への毒性があるものがあり、生態系に影響を及ぼす。

「第4の危機」・・・地球環境の変化

 例えば地球温暖化で、気温が1.5~2.5℃上がると氷が溶けだす時期が早まる。高山帯減少。海面温度上昇により、動植物の20~30%の

 絶滅リスクが高まる。


(5)生物多様性を守るために

講座風景写真
講座風景

●国際的な動き

「生物多様性条約(CBD)」

 ・1992年 地球サミット(リオデジャネイロ)で採択

 ・194の国や団体が加盟

 

「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」

  ・2010年 名古屋市で開催

 

「愛知目標」・・・生物多様性の保全に向けて、世界各国が連携して取り組む

                         20の行動目標


●日本の取組

「生物多様性基本法」・・・2008年6月施行

 ・国:国家戦略策定の義務

 ・地方公共団体:地域戦略策定の努力義務

「生物多様性国家戦略」

 ・2012年「生物多様性国家戦略2012~2020」

 ・生物多様性の保全と持続可能な利用に向けての日本の目標と取組をまとめる。

●札幌市の取組

「生物多様性さっぽろビジョン」

・2013年3月に策定

・札幌市の生物多様性保全の基本指針

・札幌の自然環境の保全と生物多様性に配慮したライフスタイルの推進


「生物多様性に配慮したライフスタイルへ」


次の世代も次の次の世代も生物多様性がもたらす自然の恵みを受けられるように、一人ひとりの取り組みが必要である。

一人の取り組み効果は小さいが1億人の日本人が実践すれば、世界の生物多様性保全に貢献できる。

・近所の公園や緑地を歩いてみよう

・地元のものや旬のものを食べよう

・環境にやさしい商品を選ぼう

 →買い物をするときにはパッケージを見て、生物多様性に配慮した製品を選びたい。

  →認証制度・生物資源の持続可能な利用




                もっと詳しく⇒ 札幌市「生物多様性の保全」

                                                                 生物多様性(環境省HP) 


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