皮革学者 竹之内一昭先生より正倉院宝物特別調査 毛材質調査報告書を頂く


日本には古代の皮革製品が最高の状態で残されている場所がある。奈良の正倉院である。正倉院と言えば、高床式の建物として知られている。元々は東大寺の宝庫で、聖武天皇・光明皇后ゆかりの品をはじめ、天平時代を中心とした多数の美術工芸品を収蔵している。

 

納められている宝物は9000点弱。その中には、馬具や武具、刀剣、履物など奈良時代に作られた最高級の革製品が沢山残されていると聞く。それらを対象に史上初めての本格調査「皮革製宝物材質調査」が2002年から2004年にかけて行われた。専門家として調査チームに係った竹之内一昭先生は、これに続き「毛製品」についても数年前から材質調査をされてきたが、その貴重な「調査報告書」をこの度、我がエゾシカ倶楽部に贈呈いただいた。 


更に有難いのは、今回、当HPにその一端を寄稿してくださったことである。1250年前の生活の知恵と工夫が凝縮された日本文化の神髄。

それらの研究成果を専門家だけのものにせず、国民で共有したいとの先生のお気持ちだと思われる。先生のお手紙の内容をそのまま引用したい。(以下)


「東大寺の大仏開眼ならびにその法要に使用されたという由緒ある筆や技楽面に触るときはとても緊張し、そしてそれらの形状や毛氈の文様と色彩に感嘆しました。すべての宝物に対しては、肉眼と拡大鏡で観察し、なるべく触らず、こよりで指しながら意見を交換し、もし剥落毛があれば、電子顕微鏡で毛の内部(毛髄質)を観察しました。

 調査の結果は筆が主に兎・狸・鹿の毛であり、技楽面の髪や髭はほとんど馬毛でした。以前、調査された結果と異なるのもあり、20年ほど前の調査では毛氈のほとんどがカシミヤに似た古品種の山羊毛と判定されていましたが、今回羊毛と判定しました。

 正倉院には毛や皮革の他にも木材、金属・紙・絹・漆等いろいろな材質の製品や書画が9000点弱収蔵されており、それらの70点ほどを毎年秋に奈良博物館の「正倉院展」で展示しています。これらは全て1250年前の製品です。ご鑑賞をお勧めします。(2016.6.1)」(原文のまま)