(一社)エゾシカ協会20年の歩みと未来に向けた提言


(一社)エゾシカ協会20周年記念シンポジウムに参加した。テーマは「エゾシカ管理の未来に向けた提言」。

同協会は、エゾシカの未来を見つめ、北海道のエゾシカ対策を牽引してきた重要な存在である。同協会が歩んだ20年の歴史をリスペクトしつつ、世間に広めていくことは、後に続く者たちの使命かもしれない。そんな思いから、協会の沿革、果たしてきた役割、今後の果たすべき課題など、当日、学んだ概略をまとめておきたい。 


エゾシカ協会20周年記念誌
エゾシカ協会20周年記念誌

協会設立は1999年。キーワードはイギリス。英国スコットランドのNGO「アカシカ協会」が当協会設立の原点となった。アカシア協会は、国のシカ法に基づき、シカ類の保護管理、生息調査、農作物保護、捕獲頭数の決定、シカ肉業者のライセンス交付用資料作成など、保護管理から活用まで、ほとんど全てを担当していた。(井田事務局長「エゾシカ協会の20年」より引用)。北海道に同じような団体をと創設したのが現在のエゾシカ協会である。同協会は設立当初から「エゾシカ肉の有効活用を推進するには衛生管理体制を確立しなければならない」という課題を掲げてきた。2006年10月に「エゾシカ衛生処理マニュアル」が完成、全国初のマニュアルとして北海道から発行された。しかし、マニュアルは自主基準に過ぎず、公的な審査体制は未整備だったため、2007年からはエゾシカ協会が第三者認証機関の役割を担う。2017年には、これまでの認証条件に加えて北海道HACCPを義務付けるなど、道による新しい「エゾシカ肉処理施設認証制度」がスタート。エゾシカ協会認証は10年間の使命を果たして終了した。


しかし、エゾシカ問題は未だ道半ばという。今後、エゾシカ協会が新たなミッションとするのは、イギリスをモデルとしたシカの管理・捕獲者の育成である。2015年に創設した「シカ捕獲認証制度(DCC)」の普及に取り組む。DCCとは「Deer Culling

Certificate」の略で、個体数管理のための安全かつ効果的なシカ捕獲をコーディネ 続的に資源として管理するための捕獲を前提とし、①効果的かつ安全で人道的な捕獲②肉の持続的資源利用のための食肉衛生、③地域主体管理の体制作りのための普及啓発の3つを教育理念としている。(松浦友紀子氏) 


DCCの狙いは、捕獲事業を担うプロの育成。育成講座の受講者はエゾシカの生態や狩猟関係法令、捕獲方法、個体数調査の手法、解体技術などを学んだ後、試験に合格することでプロ捕獲者として認証が得られる仕組みだ。趣味で狩猟を始め、専門的な技術や知識を学ぶ機会に恵まれなかったハンターにとっては朗報に違いない。

資格取得者が増えれば、ハンターの減少と高齢化が深刻な中、シカの生息が広がる地域での頼もしい活躍が期待され、森林保全にとっては勿論のこと、消費者には安全安心なエゾシカ肉が提供されるという点で喜ばしいことである。20周年の節目を機に、新たな未来に踏み出したエゾシカ協会の活動にエールを送りつつ、注目していきたいと考えている。