2020 旭川動物園「あにまる・ハッピー・マーケット」に参加! 


エゾプロダクト代表 菊地隆氏写真
エゾプロダクト代表 菊地隆氏

9月20日〜21日の両日、旭山動物園にて開催された「あにまる・ハッピー・マーケット」に行ってまいりました。 

人とエゾシカの共生社会の確立を目指し「イノチヲツナグ」をテーマに鹿皮製品を制作販売するエゾプロダクト菊地隆代表と、「行動展示」という新たな動物園のあり方をいち早く取り入れた「伝えるのは命」を理念に掲げる、旭川市旭山動物園の坂東園長が 意気投合して、エゾプロダクトの鹿皮製品を旭山動物園公式グッズとして展示販売することになったそうです!それは、エゾシカの肉も、皮も、角も、なるべく多くのものを有効利用しようと訴えてきた北海道エゾシカ倶楽部にとっても嬉しいことです。ポスターを見ると、参加団体は、ボルネオ保全トラストジャパン、知床財団、日本野鳥の会、そして…旭川市東鷹栖にあるエゾシカ専門店「山恵」さんのお名前も。過去に、エゾシカ倶楽部が開催した薬膳料理としての水餃子を作って食べるというイベントの折、当倶楽部では、当店でエゾシカ肉のミンチを購入しています。

 


副代表 渡邊有希子先生写真
副代表 渡邊有希子先生

さらに「猛禽類医学研究所」!!

一昨年のエゾシカフェスタで講演をお願いした、齋藤慶輔先生が代表をつとめる釧路の研究所です。当日は、副代表の渡邊有希子先生がおいで下さり、講師を務めてくださいました。その講演で、オオワシ、オジロワシは「アンブレラ種」と呼ばれ生態系の三角形のトップで、生態系そのものを支える存在であることを学ばせていただきました。その貴重なワシの命を危機に追い込んでいるのが、ワシが捕食しているエゾシカの肉。体にいいはずの鹿肉がなぜ?!それは、鉛弾で仕留められたエゾシカの肉には、鉛が飛び散り、肉と共にそれを摂取したワシたちが、鉛中毒になるというのです。過酷な環境で生きる貴重な猛禽類の命を救うため、寝食惜しんで保護活動をされる研究所のみなさんの映像に、胸をうたれました。


午後からは、齋藤先生と坂東園長さんのトークショーが開催されました。


齋藤先生のお話の概要。


「私は、野生動物獣医である。獣医は基本、持ち込まれた動物を診るものだが、野生動物獣医は、自然界の動物たちに目を配り、治療が必要な個体を治療し、元気にして自然に返すのが仕事。道東は、戦後に留鳥になったオオワシや、オジロワシの宝庫。流氷にのったワシたちのこれだけの数が見られるのは此処だけであり、こんなに贅沢な眺めはほかにない。 

オオワシの死亡原因は、鉛中毒と列車の衝突事故。鉛中毒に関しては、もう、卒業すべき時。

鉛弾は北海道では、すでに禁止されているが、本州のハンターが持ち込む。全国で銅弾を使用すれば解決することである。 


私たちは鉛弾の禁止を長く訴え、署名活動も行ってきた。昨年、小泉環境大臣がようやく、検討を始めることを言明した。来年の鳥獣保護法の改正に合わせて目指すとのことなので、その成果に期待したい。なるべく沢山の方に、大臣のその方針を後押ししてほしい。 鉛製散弾銃の破片を、砂肝に必要な砂と間違えて自ら飲み込み、水鳥まで鉛中毒になっている。また、鉛製の釣りの重りも、水鳥たちに鉛中毒を引き起こす原因である。他の原料のものを使うべきだ。


斎藤先生と坂東園長写真
斎藤先生と坂東園長
斎藤先生と坂東園長対談写真
斎藤先生と坂東園長 トークショー
斎藤先生の写真
斎藤先生


一方、オジロワシの死亡原因の多くに、風力発電の風車との衝突がある。鳥獣の保護も、自然エネルギーの推進も同じ環境省の事業であり、矛盾を孕んでいる。しかし、風力発電をやめてはいけない。野鳥たちを傷つけないような風力発電装置の開発を進めて欲しい。電柱、変圧器、電線などの送電装置での感電で、怪我や死亡をする野鳥が後を絶たない。いくら怪我した野鳥を治療しても追いつかないので、人間が壊している環境も治療すべき。そこで、北海道電力に働きかけ、感電を予防する装置を全道2500カ所に設置してもらった。装置は次々と改良を重ね、現在、バージョン26まである。 


鉛中毒では薬を投与するが、それだけでは不十分で、さらに輸血が必要である。その血液を提供してくれるのは、怪我して持ち込まれ、回復したものの、翼の欠損などで野生に帰ることができなかったワシたちである。一生、自然界に帰れないのはかわいそうではあるが、保護施設で生きることで、仲間たちの命を助けるという大きな役割を果たしてくれている。

動物愛護とは施しではない。人間との共存に苦しむ野生動物たちに対する責任である。私は共存でなく共生を目指したいと願う。


齋藤先生のお話をうけて坂東園長のお話の概要


旭山動物園長 板東 元氏
旭山動物園長 板東 元氏

野生動物、とくにワシの保護は、猛禽類研究所と旭山動物園とが協力して行っており、実際、現在も、バックヤードに保護しているワシたちがいる。しかし、そのワシたちの引き取り先を探すのは難しい。動物園は、来園者の要望の関係で、地元の動物に重点をおけない状況がある。ワシのために大きな施設を建設するのは、容易なことではない。

課題も多い中ではあるが、今後も齋藤先生とは、バトンワークで人と野生動物との共生を目指していきたい。

坂東園長がつけているのは、旭川市のM染物店で作っている旭山動物園バージョンのマスク)。



オジロワシ、オオワシの鳥舎の写真
オジロワシ、オオワシの鳥舎

このトークショーのあと、動物園を見て周りました。しばらく、コロナ禍で観光客が途絶えていましたが、4連休中の今日は久々に大勢の人出でした。 

 

お客様の話し声からは、中国語や韓国語が飛び交っていた以前と違い、殆どが日本語。しかも、道内の人が多いようでした。エゾシカ舎のフェンスにも沢山の人が集まり、盛んに立派な角を持ったエゾシカの写真を撮っていました。


園長さんのお話で気になった猛禽類舎にも行ってみました。改めて見ると、オジロワシ、オオワシの鳥舎の大きさに驚きました。確かに、このような施設が必要とあれば、いくら貴重なワシも簡単には引き取ることはできないでしょう。フクロウの森にも沢山の人がいて、とくに楽しい反応がない地元にもいる動物にも、関心をもっている人が多いことを嬉しく思いました。



ところで、齋藤先生が動物園にいらっしゃることは事前に決まっていたわけではなく、トークショーも急遽、開催されたようです。当倶楽部が開催したエゾシカ・フェスタでは、2018年には斎藤先生の代理で渡辺先生が,2019年開催では坂東先生がそれぞれメイン講師を務めて下さいました。当倶楽部にゆかりある3人の先生方が、一堂に会してのイベント、トークショー。忘れられない思い出になりました。      (森 裕子)