苫小牧市街地をエゾシカ20頭が疾走!追いつめられる人間社会


西興部村前村長 高畑氏が撮影した写真
西興部村前村長 高畑氏 撮影
雨上がりの苫小牧市街地の写真
雨上がりの苫小牧市街地

苫小牧市街地をシカ20頭が疾走!という3/22のニュースには驚くばかりだ。 同時に、遂にその日が来たかという思いもある。脳裏に浮かぶのは、旭山動物園の坂東園長の言葉だ。


「シカは夜間、街中にまで来ている。人間が気付かないだけ。夜間は撃たれないことを知っている。街に宵闇が迫ればシカたちのお出かけの時間。「そろそろ行くか」と腰をあげる。人々は見えない所で起きていることには関心を示さず、見えるところに対しては感情的になる。関心は自分にとっての被害だけ。庭先に花を植えてシカが食べれば害獣。自分が関わっていなければ無関心だ。自然そのものが破滅に向かっていることに目を向けようとしない」。


苫小牧市は、もともとシカが多い。市内の縄文時代の遺跡からはシカの絵が描かれた土器、エゾシカの骨が大量に出土していると聞く。豪雪を嫌い、ササ類を好むエゾシカにとって太平洋沿岸は越冬地として最適だったのだ。明治時代には、美々(びび)(JR千歳線2017.3.3廃駅)に鹿のカンズメ工場があり、輸出もしていたようだが、獲りすぎてシカはいなくなり、工場を閉鎖したという歴史がある。


街中は、鹿にとって安住の場所でもある。市街地では撃たれないということを彼らは今回、学んだ筈だ。人の生活圏に一旦、足を踏み入れた野生動物は、どんどん侵入する。大地を巡る壮大な人間との陣取り競争。角という武器を持ち、若さとエネルギーに溢れたアスリート軍団&少子化で老いていくだけの人間世界。立ち向かうことはできるのか。人間の住む場所が狭められてくることを懸念するばかりだ。