沖縄「マース袋」製作体験講座

札幌で感じる、沖縄の祈りと海の恵み

講師：　柏谷会員　　　2025.9.14

開場：札幌エルプラザ３階「工芸室」

参加者：１９名

はじめに

エゾシカと沖縄の伝統文化を感じる体験講座として、「マース袋」製作講座が開催されました。

この講座では、沖縄の伝統的な塩袋「マース袋」の素材や歴史についての解説に続き、講師が実際に袋の縫製や仕上げの技術を実演。

参加者は自分の手で布を裁断し、縫い合わせていく過程を体験しました。

講師は、当倶楽部の柏谷道男会員。革細工はベトナム赴任中に習得、また、北海道フードマイスターとして食の知識も豊富。蕎麦道場主としての経験も活かしながら、現在はエゾシカ倶楽部の活動を通じて、食とモノづくりの楽しさを伝えています。

🧂マース袋とは？
マース袋は、沖縄で古くから親しまれてきた塩のお守りです。「マース」とは沖縄の言葉で“塩”のこと。旅の安全や日々の厄除けを願い、身につけたり持ち歩いたりすることで、邪気を遠ざけるとされています。

🏝️浜比嘉島の神聖な塩を使用
今回のマース袋には、琉球神話の舞台として知られる浜比嘉島の天然塩を使用。浜比嘉島は、子孫繁栄・縁結び・無病息災を祈る聖地としても有名です。

🌊満月の夜に採取された海水から精製
袋の中に入っている塩は、満月の夜に浜比嘉島の海から採取された海水を使って丁寧に精製されたもの。月の力と海の恵みが込められた、特別なお守りです。

実演会までの経緯

今回の実演会は、北海道の森に生きるエゾシカの革と、沖縄の海から生まれた塩を包むマース袋が出会うまでの構想を形にしたものです。

かつて農業被害対策などで捕獲されたエゾシカの革は、多くが活用されずに廃棄されていましたが、近年、地元工房や革職人が「資源を無駄にしない」取り組みとしてエゾシカ革で製作された高級バックなどが販売されています。

一方、沖縄では古くから旅の安全や健康を祈る「マース袋」が作られてきましたが、持ち歩くうちに擦れや型崩れが生じやすく、より耐久性のある素材が求められていました。
この二つの課題と文化が結びつき、「北海道のエゾシカ革で沖縄のマース袋を作る」という構想が生まれました。

浜比嘉島の塩の紹介

マース袋は、漁師や旅人だけでなく日常生活でも家族の安全や健康を願って持たれ、玄関や車内に掛けられることもあります。紅型やミンサー織の文様には「長寿」や「永遠の愛」などの意味が込められ、持つ人の願いを静かに守り続けます。

本島から海中道路を渡って行ける小さな島で、今も昔ながらの集落や赤瓦の家並みが残ります。島全体が神話と生活文化の舞台であり、訪れる人は海風とともに古代からの物語を感じ取ることができます。

シルミチュー霊場は子宝や安産を願う人々が全国から訪れる場所で、洞窟内には神聖な空気が漂います。アマミチューの墓もまた、島の人々が代々守り続けてきた拝所で、旧暦行事や祈願の際には今も多くの参拝者で賑わいます。

工房は潮の香りと波音に包まれ、ここで作られる塩は料理の味を引き立てるだけでなく、贈り物やお守りとしても喜ばれます。島の魅力を伝える手土産としても人気です。

ここでは、流下式塩田という、竹枝を利用した昔ながらの製塩方法を採用。自然の力で海水を循環させ、ミネラル豊富な塩に仕上げます。
この方法は海水を竹枝に流し、太陽と風の力で水分を蒸発させる自然に寄り添った製法。人工的な加熱をほとんど使わないため、海水本来の旨みやミネラルがそのまま残り、まろやかで深みのある塩が生まれます。